WiMAXのサービスを提供している企業はいくつもあります。
でも、なんで?
「なぜ同じサービスを違うお店が取り扱ってるの?」と疑問に思うことはありませんか?
WiMAXの通信回線を提供しているのは、UQコミュニケーションズというKDDIグループの企業です。
いわゆるプロバイダと呼ばれるWiMAX取り扱い企業は、あくまで販売代理店で、UQコミュニケーションズが所有するWiMAX通信サービスを販売する役割を担っています。
これで疑問が解決しましたね。
というのは冗談で、このページではそれだけでは物足りないという人向けに、さらに掘り下げて徹底的に解説していきたいと思います。
それにはIEEEやMVNO、総務省との関係が関わってきますので、一つ一つ紐解いていきましょう。
WiMAXとIEEEと企業
IEEE(アイ トリプル イー)というのはご存知でしょうか?
「いきなりなんのこっちゃ」と思われるかもしれませんが、一連の流れを理解するためには大切なことなので、ぜひ知っておいていただきたいのです。
簡単に説明すると、
IEEEは、WiMAXという無線通信技術の規格を策定した国際的な団体です。
IEEEについて詳しく知りたい方はこちら→IEEEとは?

あ、じゃあこの団体がWiMAXの通信サービスを販売してるのかな?
と思われるかもしれませんが、そうではありません。
WiMAXはIEEEによって策定された無線通信技術の規格ですが、IEEEが無線通信基地局を設置したり、通信サービスの提供・販売を行っているわけではありません。
IEEEは学会であり、営利的活動は行っていないのです。
では、WiMAXという通信サービスは、いったい誰が提供しているのでしょうか。
WiMAXは「企業」が提供している
まず理解していただきたいのは、WiMAXは、世界最大規模かつ最も権威ある、IEEEという学会によって、標準化された規格である、という事です。
つまり、WiMAXは「世界的に認知される次世代の新しい規格」であるという事です。
それに加えて、IEEEを構成する会員は、研究者などの学術界からだけではなく、産業界からも多数、在籍しています。
そういった会員は自社の有利になるような標準仕様に、より近づけようと働きかけます。
そしてそのような働きかけには、新たな市場を作り上げ利益を享受しようという、明確な目的があります。
これらをまとめると、「新たな標準は、新たな市場を構築し、新たなビジネスチャンスを生む」ということです。
その新たなビジネスチャンスは、世界的規模での市場を見据えることも可能な程に巨大で、成功できれば多くの利益を上げることが可能となります。
つまり、商機をうかがう企業は、「その標準に沿ったサービスを提供したい」と考えるのです。
ゆえにWiMAXの通信サービスは、政府や学会などの非営利的団体や組織ではなく、営利的活動を目的とする、企業によって提供・運営されています。
日本でのWiMAXの提供元
そんなWiMAX通信網を、日本で敷設しているのは「UQコミュニケーションズ」という企業です。
UQコミュニケーションズは「UQ WiMAX」という名前のWiMAX通信サービスを展開しています。
なぜ「提供元」という言い方をするのかというと、WiMAXの通信サービスを販売している企業は複数ありますが、それはあくまでMVNO(販売代理店)であって、MVNOはWiMAX通信網を自ら敷設して、それを提供しているわけではありません。
つまり、WiMAX通信網の提供元はUQ コミュニケーションズであるということですね。
なぜそのような関係性になっているのかについては、次の項目でお話しします。
WiMAX通信サービスを販売している企業がいくつもあるのはなぜ?
なぜWiMAXの提供元であるUQ コミュニケーションズ以外にも、WiMAX通信サービスを販売している企業があるのでしょうか?
UQ コミュニケーションズ以外にもWiMAX通信網を敷設している企業があるという事でしょうか?
いいえ、違います。
日本でWiMAX通信網を敷設している企業はUQ コミュニケーションズ1社のみです。
そして、UQ コミュニケーションズはUQ WiMAXという名前の、WiMAX通信サービスを販売しています。
では、なぜWiMAX通信網を所有していない企業が、WiMAXの通信サービスを販売しているのでしょうか?
それは、MVNOだからです。
MVNOとは?
MVNO(エム ブイ エヌ オー)とは「Mobile Virtual Network Operator」の略で、仮想移動体通信事業者を意味します。
また、これに関連して知っておいていただきたいのはMNO(Mobile Network Operator:移動体通信事業者)という言葉です。
見慣れない文字の羅列で難しく思えるかもしれませんね。
簡単に言うと以下の通りです。
MNO | 通信インフラを自分で所有している事業者 |
MVNO | MNOから通信インフラを借りている事業者 |

MVNOはMNOからインフラを借りてる?どういうこと?
要は、MVNOはお客さんに売るための商品(通信サービス)をMNOから借りています。
イメージとしては、MVNOは販売代理店です。
少しだけ詳細に説明すると以下の通りです。
MNO:UQコミュニケーションズのように、無線基地局を自ら開設して、移動体通信サービスを提供する電気通信事業者のことは「MNO」といいます。
MVNO:無線基地局を自ら開設・運用せずに、MNOの提供する移動体通信サービス(簡単に言うと無線通信のサービス)を利用して移動体通信サービスを提供する電気通信事業者のことを指します。
これで理解しやすくなったのではないでしょうか。
MNOとMVNOの両者の詳しい定義は、総務省総合通信基盤局の「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用に関するガイドライン」(平成29年2月改定)で定義されています。
なぜMVNOを設ける必要があるの?

提供元は独自の通信インフラを持っているんだから、サービス展開は独り占めした方がおいしいんじゃない?
と思われるでしょう。
しかし、市場の独占は公共の利益を損なう可能性と常に隣り合わせで、そういった事態を危惧する声は当初から聞こえていました。
これに対する回答として、「認定電気通信事業者」というのが一つのキーワードになります。
UQ コミュニケーションズは認定電気通信事業者です。
認定電気通信事業者というのは総務省によって認定された事業者のことであり、この認定を受ける際に、MVNOへの取り組みが条件として組み込まれています。
上記に掲載した総務省のガイドラインにも以下のように記載されています。
難しいことが書いてあるように思われますが、これはつまり、「MVNOを受け入れましょう」という意味です。
また、UQ コミュニケーションズは当初からMVNOに寛容で、競合となるであろう企業にも、広く対応していく方針を表明していました。
こうして、MVNOは無線通信基地局を敷設することなく、初期投資を抑えて市場に参入できるようになりました。
その結果、いくつもの企業がWiMAXの通信サービスを販売することが出来るようになったのです。
でもそれじゃ、提供元は損じゃない?
わざわざ自ら敷設した通信網を人に貸すだけではたしかに損です。
しかし企業はあくまで営利を目的とする存在であり、慈善団体ではありません。
当然、MVNOになりたいという企業には、契約とそれに伴う料金を設定して、MNOの利益になる仕組みを用意しています。
UQコミュニケーションズの公式サイトには、MVNOの申し込みに関わるページを用意しているなど、MVNOの受け入れはビジネスモデルとしてしっかりと確立されています。
そうでなければ、巨額の資金を投じてわざわざ通信回線を敷設しようなんて考える人はそうそういないでしょう。
つまり、MVNOの受け入れは損ではないのです。
MNOとMVNOの関係性
ただ、MNOとMVNO両者の関係性は危ういようにも思えますよね。
ビジネスにおいては利害関係から、立場の上下がはっきりと分かれてしまうことが多々あります。
より優位な側が立場を利用して、相手に無理難題を押し付ける、という状況はよろしくありません。
そういった事態に対応するために、総務省のガイドラインには以下の内容が記載されています。
MNOとMVNOの関係性を明確にし、なるべく公平性や公共の利益が保たれるよう、環境が整備されているんですね。
認定電気通信事業者になること自体にメリットがある
総務省から認定されることで、公益事業特権が与えられ、これにより以下のような権利が与えられます。
- 道路占用に当たっての道路管理者の義務許可
- 他人の土地の使用権の設定
- 海底ケーブルを敷設する際の公用水面の使用
- 共同溝・電線共同溝などの利用等の特権
これにより、データ通信網の敷設・拡大や今後の事業展開をより優位に運ぶことが出来るようになります。
まとめ
長々とお話ししましたが、WiMAXの通信サービスにはこのような背景があります。
そして、WiMAXの通信サービスを提供している企業はいくつもあります。
「なぜ同じサービスを違うお店が取り扱ってるの?」という疑問に対する回答として、
それにはIEEEやMNOとMVNOの関係性、総務省の認定が関わっているという事を覚えておいてもらえればと思います。